Athlon 64 X2

Athlon 64 X2の概要



Athlon 64 X2は、2005年にAMDが発売したx86アーキテクチャのマイクロプロセッサです。AMD K8アーキテクチャをベースとし、Athlon 64のデュアルコア版として登場しました。2007年には、64ビットプロセッサであることが一般的になったため、製品名をAthlon X2に変更し、より上位のPhenomシリーズとのブランド統一を図りました。

登場までの経緯



当初、K8アーキテクチャはエンタープライズ市場も視野に入れて開発されており、デュアルコアプロセッサもその計画に含まれていました。しかし、シングルコアプロセッサの需要が堅調だったため、製造能力に余裕がなかったAMDは、デュアルコア製品をすぐにコンシューマー向けに投入することは考えていませんでした。

当初、デュアルコア製品はAthlon 64とOpteronの中間に位置するAthlon 64 FXの後継として開発されていましたが、K8アーキテクチャの構造上、高クロック製品の製造が難しく、業界全体で半導体技術の進歩が鈍化し、消費電力と発熱が課題となっていました。競合のIntelがコンシューマー向けデュアルコア製品を発売したことを受け、AMDも対抗せざるを得なくなり、デュアルコアの「Toledo」がAthlon 64の後継として再定義され、発売に至りました。

AMDは、Athlon 64 FXが3Dゲーム用途に特化しており、マルチコア化しても性能向上が見込めないと説明しています。

性能と市場での位置づけ



Athlon 64 X2は、Athlon 64の低発熱、低消費電力、高性能という評価を受け継ぎました。発売当初は、競合のIntelが新製品開発で遅れていたため、AMDは強気の価格設定をしていました。そのため、Athlon 64 X2はAthlon 64の上位製品として位置付けられ、コストパフォーマンスでは劣っていました。しかし、多くのAthlon 64用Socket 939プラットフォームで利用できるという利点がありました。

その後、IntelがCore 2を発表すると、Athlon 64 X2の長所は影を潜めることになります。危機感を感じたAMDは、Core 2の発売直前に大幅な価格改定を行い、Athlon 64の後継製品としての位置付けを確立し、コストパフォーマンスを大幅に改善しました。しかし、価格性能比でIntel Core 2と同等になるまでには、約半年後の2007年2月までかかりました。

コストパフォーマンスを考慮すると、K8アーキテクチャはほぼ全てのチップセットがBIOSの更新だけで上位プロセッサに対応できたため、マザーボードが安価で流通していたことも特筆されます。

通常の熱設計電力（TDP）は最大89Wでしたが、2006年6月には、WindsorコアでTDPを抑えたEE（ENERGY EFFICIENT）モデルやSFF（Small Form Factor）モデルも登場しました。

2007年8月以降は、一部モデルに「Black Edition」が登場しました。Black Editionは、CPUクーラーが同梱されない代わりに、倍率ロックがフリーになっており、オーバークロックなどを行うユーザー向けの製品です。

各世代の詳細



Toledo（トレド）


  • - 駆動電圧：1.35Vまたは1.40V
  • - リビジョン：JH-E6
  • - 製造プロセス：90nm SOI
  • - L1キャッシュ：各コア64+64KiB
  • - L2キャッシュ：各コア1024KiBまたは512KiB
  • - 対応ソケット：Socket 939
  • - HyperTransport：1000MHz
  • - TDP：最大89Wまたは110W

Manchester（マンチェスター）


  • - ToledoのL2キャッシュを削減したモデル
  • - リビジョン：BH-E4
  • - 製造プロセス：90nm SOI
  • - L1キャッシュ：各コア64+64KiB
  • - L2キャッシュ：各コア512KiBまたは256KiB
  • - 対応ソケット：Socket 939
  • - HyperTransport：1000MHz
  • - TDP：最大89Wまたは110W

ToledoとManchesterは、Socket 939で使用できるCPUの中でも上位レベルの製品であり、製造終了後も需要が高く、中古市場でも高値で取引されていました。

Windsor（ウィンザー）


  • - 2006年5月発売
  • - AMD-V (AMD Virtualization)を実装
  • - DDR2 SDRAMに対応
  • - リビジョン：BH-F2, BH-F3, JH-F2, JH-F3
  • - 製造プロセス：90nm SOI
  • - L1キャッシュ：各コア64+64KiB
  • - L2キャッシュ：各コア1024KB, 512KB, または256KB
  • - 対応ソケット：Socket AM2
  • - HyperTransport：1000MHz
  • - TDP：最大35W、65W、89W、または125W

Brisbane（ブリスベン）


  • - Windsorコアを65nmプロセスで微細化したモデル
  • - 消費電力と発熱を低減
  • - L2キャッシュ容量は半減
  • - Enhanced Halt State (C1E)をサポート
  • - リビジョン：BH-G1, BH-G2
  • - 製造プロセス：65nm SOI
  • - L1キャッシュ：各コア64+64KiB
  • - L2キャッシュ：各コア512KiB
  • - 対応ソケット：Socket AM2
  • - HyperTransport：1000MHz
  • - TDP：最大89W

Athlon X2



Brisbane（ブリスベン）


  • - Athlon 64 X2のBrisbaneコアと同様の仕様
  • - 名称から「64」を削除
  • - モデルナンバーがBE-xxxxからxxxxeに変更
  • - リビジョン：BH-G1, BH-G2
  • - 製造プロセス：65nm SOI
  • - L1キャッシュ：各コア64+64KiB
  • - L2キャッシュ：各コア512KiB
  • - 対応ソケット：Socket AM2
  • - HyperTransport：1000MHz
  • - TDP：最大45W (組み込み向けは最大22W)

Kuma（クマ）


  • - Phenomと同じK10マイクロアーキテクチャを採用
  • - AMD-VはNested Paging Tableに対応
  • - リビジョン：DR-B3
  • - 製造プロセス：65nm SOI
  • - L1キャッシュ：各コア64+64KiB
  • - L2キャッシュ：各コア512KiB
  • - L3キャッシュ：全コア共有2048KiB
  • - 対応ソケット：Socket AM2+
  • - HyperTransport：1800MHz
  • - TDP：95W

Athlon 64 X2は、デュアルコアCPUの黎明期を支えた重要な製品であり、その後のCPUの進化に大きな影響を与えました。

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